「なんとなく、こっちを選んだほうが良さそうだ」 「理由はわからないけれど、嫌な予感がする」
皆さんは、そんな**「直感」**を信じますか?
スピリチュアルな話だと思われるかもしれませんが、私はこの「直感」の存在を確信しています。 なぜなら、私自身が40年間の仕事の現場で、毎日その力を使い続けてきたからです。
私はこれまで飲食業界の最前線に立ち続け、カウンター越しにおよそ96万人のお客様を接客してきました。 日本の地方都市の人口に匹敵する数の「人間」を、至近距離で観察し続けてきた経験から、ひとつ分かったことがあります。
それは、**「直感とは、魔法ではなく『統計学』である」**ということです。
今回は、私が40年かけて現場で培ってきた「直感の正体」と、AI時代にこそ役立つ「観察の視点」についてお話しします。
40年間で96万人を見て気づいた「予感」の精度
これだけの数の人間を見ていると、理屈では説明できない不思議な感覚が働くようになります。
お客様がドアを開けて入店し、席に着くまでのわずか数秒。 その歩き方、視線の配り方、まとっている空気感を見るだけで、言葉を交わす前に**「このお客様は、何を求めているか」**がわかってしまうのです。
- 「急いでいるから、スピード重視で対応したほうがいい」
- 「今日は何か良いことがあって、誰かと話したい気分だな」
- 「少しイライラされているから、距離感を慎重に保とう」
こうした「予感」は、ほぼ100%外れません。 これは超能力ではなく、脳が勝手に過去のデータと照合を行っているからです。
「同じ人は二度と来ない」鋭いマネージャーとの会話
先日、ヘルプ先の施設でこの話をした時のことです。 現場を取り仕切る40代の女性マネージャーが、私の話を聞いてニヤリと笑いました。彼女は経験豊富で、非常に勘の鋭い方です。
「かずおさん、96万人と言っても常連さんもいるでしょう? 同じ人を何回もカウントしてるなら、ちょっと数字盛ってない?(笑)」
冗談めかして笑っていましたが、その目は真剣でした。鋭いツッコミです。 確かに、何度も足を運んでくださる常連様はたくさんいらっしゃいました。
ですが、私はこう答えました。
「マネージャー、もちろん同じ人もいますよ。でもね、昨日のその人と、今日のその人は、全くの別人のように違うんですよ」
その日の体調、お腹の減り具合、懐事情、あるいは直前に嫌なことがあったのか、良いことがあったのか。 顔色や声のトーン、わずかな空気感は毎日違います。
私は40年間、単なる「名簿上の名前」を見てきたのではありません。 **「その瞬間の、その人の状態」**を見続けてきたのです。
そう伝えると、彼女は「なるほどね……確かにそうかも」と、深く納得してくれました。
直感の正体は「ビッグデータ検索」
多くの人は直感を「長年の勘」や「センス」という言葉で片付けますが、私は明確に定義しています。
直感とは、脳内に蓄積された「膨大なビッグデータ」から導き出された、超高速の検索結果です。
私の場合、96万人分の「人間観察データ」が脳内にあります。 目の前の人のちょっとした仕草(検索ワード)が入力された瞬間、脳は過去のデータベースから「似たパターンの事例」を瞬時に検索し、「こう対応すべきだ」という答え(検索結果)をはじき出します。
これが、私たちが「直感」と呼んでいるものの正体です。
「違和感」こそが最大のリスク回避シグナル
では、私たちはその直感をどう使えばいいのでしょうか。 現場で働く私が感じる直感、その正体のほとんどは**「違和感」**として現れます。
「いつもと何かが違う」
この小さなズレに気づく力こそが、直感の源泉です。
言葉は嘘をつくが、空気は嘘をつかない
私が痛感しているのは、**「人間は言葉では嘘をつけるが、非言語(ノンバーバル)な部分では嘘をつけない」**ということです。
「大丈夫です」「満足しています」と口では言っていても、表情筋のわずかな強ばり、視線の揺らぎ、手元の落ち着きのなさ……そういった「非言語情報」は、その人の本音を雄弁に語っています。
例えば、お客様がメニューを見ている時の「目の動き」。 迷っているのか、探しているのか、あるいは値段を気にしているのか。その「間」や「空気」を読むことで、最適な提案が可能になります。
「言葉以外の情報に、真実は隠されている」 この事実を意識するだけで、仕事や人間関係のトラブルを未然に防ぐことができます。
今日からできる「直感力(観察眼)」の磨き方
「私にはそんな経験数がないから無理だ」と思われたでしょうか? いいえ、意識を変えるだけで、今日から直感は磨けます。
私がおすすめする方法は、**「定点観測」**です。
私が店という「定点」から人を見続けてきたように、あなたも日常の中で「定点」を持ってください。 いつもの通勤電車、いつものカフェ、いつもの散歩道。 スマホを見る時間を少し減らして、同じ場所で、人を観察し続けてみるのです。
- いつもと同じ場所を見る
- 「今日は何かが違う」という微差を探す(あの人、今日は足取りが重いな、など)
- 予測して、答え合わせをする
これを繰り返すことで、あなたの中のデータベースは更新され、直感の精度は確実に上がっていきます。
まとめ:AI時代にこそ「人間独自の統計」を
今、世の中はAI全盛期です。 論理的なデータ分析において、人間はAIに敵いません。
しかし、「その場の空気」を感じ取り、「相手の言葉にならない想い」を汲み取る直感力は、人間にしかできない高度な処理能力です。 40年の経験は裏切らないし、あなたがこれから積んでいく経験も、すべて未来の直感を作る材料になります。
迷ったときは、自分の脳内に蓄積された経験則、つまり「直感」を信じてみてください。 その「なんとなく」には、必ず理由があるのですから。

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