こんにちは、かずおです。
60代、調理師として40年のキャリア。 自分の店を切り盛りし、多くのスタッフを束ね、責任ある立場で指示を出してきた。そんな私たちが新しい現場に飛び込んだとき、最大の壁となるのは「技術」でも「体力」でもありません。
それは、**「プライドの置き場所」**です。
今回は、私が再就職した現場で実践している、ベテランこそ持つべき最強の武器**「敬語の魔法」**について深掘りしてお話しします。
1. 「使いづらいベテラン」というレッテルを剥がす
長年、現場のトップとしてやってきた私たちにとって、自分の子供のような年齢の若造に指示されるのは、正直面白くないものです。「そのやり方は違う」「効率が悪い」……口に出したくなる言葉は山ほどあるでしょう。
しかし、現場の若手も同じように、いえ、それ以上に**「怯えて」**います。
- 「気難しい頑固なベテランが来たらどうしよう」
- 「自分のやり方に口出しされたら嫌だな」
- 「教えにくいな、気を遣うな」
この**「お互いの見えない壁」**を壊さない限り、新しい職場での居場所は絶対に作れません。まずは自分からその壁を壊す。そのための第一歩が「徹底した敬語」なのです。
2. かつて憧れた「本当にかっこいい先輩」の正体
自分が若手だった頃を思い出してみてください。 威張り散らしてマウントを取る職人と、こちらを一人前として扱い、丁寧な言葉で接してくれた年配者。どちらと一緒に仕事をしたかったでしょうか?
私は圧倒的に後者でした。 敬語で接してくれる年配の方は、現場において圧倒的に**「使いやすかった」**のです。
「使いやすい」という言葉は、ベテランに対して失礼に聞こえるかもしれません。しかし、現場においては**「信頼して仕事を任せられる」「コミュニケーションにコストがかからない」**という、プロに対する最高の褒め言葉だと私は考えています。
3. 敬語は「負け」ではない。現場を支配する「大人の戦略」
私が今、20代の若手にも徹底して敬語を使っているのは、自分を卑下しているからではありません。むしろ、現場を円滑に回すための高度な戦略です。
① 相手の警戒心を一瞬で解く
敬語を使うことで、「私はあなたの領域を荒らさないし、過去の栄光を振りかざしてマウントを取るつもりもない」という明確なサインを送り、敵意がないことを示します。
② 相手を「プロ」として承認する
丁寧な言葉遣い一つで、相手に「自分はベテランからも尊重されている」という自信を与えます。人間は、尊重してくれる相手に対しては、自然と親切に、そして丁寧に接したくなるものです。
③ 結果、自分が一番「得」をする
相手が心を開けば、必要な情報はどんどん入ってきます。仕事の連携がスムーズになり、ミスが減り、最終的に自分が一番働きやすい環境が手に入ります。これこそが、40年の荒波を越えてきた人間だけが選べる「賢い選択」です。
4. 「言葉のトゲ」を抜く、自分を守るための防護服
もし、私がベテラン風を吹かせてタメ口で接していたらどうなるか。 新しい職場で覚えが悪い私に対し、若手は「だから昨日も言ったじゃないですか!」と、イライラを隠さずトゲのある言葉を投げつけてくるでしょう。
そうなれば、私の心も折れ、「何だその言い方は!」と反発し、現場の空気は最悪になります。
しかし、こちらが先に**「すみません、不慣れなもので……もう一度だけ教えていただけますか?」**と頭を下げて敬語で歩み寄る。 すると不思議なことに、相手の言葉からもトゲが消えます。 「仕方ないな、じゃあもう一回だけ言いますね」 そんな柔らかい反応に変わるのです。敬語は、自分自身の自尊心を守るための「最強の防護服」なのです。
5. 記憶力の衰えを「朝活3時」の執念でカバーする
もちろん、言葉遣いだけで通用するほどプロの世界は甘くありません。 60代。正直、記憶力もスピードも20代には勝てません。だからこそ、私は「仕組み」と「努力」でカバーしています。
- 徹底したメモ: 教わったその瞬間に、汚い字でもいいからメモを取る。
- 朝活3時からの予習・復習: 持ち帰ったメモを整理し、翌朝3時から「明日の動き」をシミュレーションします。
「嫌なことを言うやつに、仕事のミスで隙を見せたくない」 その一心で、裏では誰よりも努力して仕事を叩き込みます。敬語という潤滑油を使いながら、裏では牙を研ぐ。これがベテランの意地です。
結論:プライドは「技術」に、言葉には「愛」を
40年のキャリアは、言葉で誇示するものではありません。 鮮やかな包丁さばき、無駄のない段取り、そして周りを生かす観察眼。 それだけで十分伝わります。
「あのおじさんは、すごい技術を持っているのに、本当に腰が低い。教えがいがあるし、一緒に働くと気持ちがいい」
そう言われるようになったとき、あなたは新しい現場にとって欠かせない、真に「愛されるプロ」になれるのです。
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