【給食現場】ベテランはなぜ一声かけるのか|仕事ができる人に共通する「人を見る力」

給食調理・人間関係

こんにちは、かずおです。

60才で給食業界へ転職し、介護施設の調理師として働きながらブログやSNSを発信しています。

40年96万人の接客で磨いた「人を見る力」をもとに、仕事や人間関係の気づきを書いています。

給食現場で働いていると、仕事ができる人と、信頼される人は必ずしも同じではないと感じることがあります。

作業は早い。覚えもいい。手も動く。
それでも、なぜか周囲との距離が縮まらない人がいる。

逆に、特別目立つわけではないのに、自然と周りから頼られ、職場の空気を整えている人もいる。

この差は何なのか。

先日、アルバイト先であった小さな出来事から、あらためて考えさせられました。

今回は、新しく入った20代の新人社員さんとのやり取りを通して見えた、
「仕事ができる人」と「信頼される人」の違いについて書いてみます。

同じように、職場の人間関係に少しモヤモヤしている方の参考になればうれしいです。


新しく入った20代の新人社員さん。仕事はできる、でも少し気になることがあった

アルバイト先に、新しく20代の女性社員さんが入りました。

接客業の経験がある方で、仕事はできるタイプです。
覚えも早いし、手も動く。
以前、厨房研修で私が少し教えたこともありました。

本人は「人見知りなんです」と言っていましたが、仕事ぶりを見る限り、決して不器用な人ではありません。
むしろ、現場に入ってからの吸収は早い方だと思います。

ただ、最近少し気になることがありました。

下膳した食器を持ってきた時。
備品を置いていく時。
何か作業を終えて次に移る時。

何も言わずに、スッと置いていく。

「ここに置きますね」
「下げておきました」
「これ、置いておきます」

その一言がないのです。

もちろん、仕事はしています。
手を抜いているわけでもないし、サボっているわけでもない。
ただ、何度か続くと、少し鼻につく。

正直に言えば、

「一言くらいあってもいいんじゃないか」

そう思いました。


「注意した方がいいかな」と思った。でも、すぐには言わなかった

最初は、軽く注意した方がいいのかなと思いました。

「置く時は一言あると助かるよ」
そう伝えれば済む話です。

施設長に相談しようかと頭をよぎったこともあります。
でも、そこまで大ごとではない。
本人に悪意があるようにも見えない。

それに、こういう時に私はいつも一度止まります。

すぐに「正しいこと」を言うのではなく、
まず、周りを見て、相手を見て、状況を見ます。

そこでふと思ったのです。

他のベテランさんたちは、どうしているだろう?


ベテランさんたちは、必ず一声かける

思い返してみると、ベテランの方たちはほぼ例外なく一声かけます。

「ここに置いておきますね」
「下げておきました」
「先にこれやっておきます」
「これ、お願いしていいですか?」

ほんの短い言葉です。
でも、その一言があるだけで、厨房の流れが見えやすくなります。

誰が何をしたのか分かる。
どこに何が置かれたのか分かる。
次に何をすればいいかも分かりやすい。

そして、それ以上に大きいのは、
その一言の中に、相手への配慮と敬意があることです。

私はこの違いが、ずっと気になっていました。

同じように仕事をしているのに、なぜベテランさんたちは自然に声をかけ、
新人さんは無言で置いていくのか。

この差は何だろう。


仕事ができることと、信頼されることは別の話

考えてみて、私なりに出た答えがあります。

それは、

仕事ができることと、信頼されることは別の話だということです。

新人さんは、仕事ができないわけではありません。
むしろ、手際は悪くない。覚えもいい。

ただ、今の段階では、仕事を「作業」として見ているのだと思います。

  • 下膳を持っていく
  • 物を置く
  • 次の作業に移る
  • 自分の担当を終わらせる

ここまではできている。

でもベテランになると、仕事の見え方が少し変わります。

仕事は、自分ひとりで完結するものではなく、
人とつながって流れていくものだと分かってくる。

たとえば厨房では、

  • 食器をどこに置いたか
  • どの作業が終わったか
  • 何を先にやったか
  • 次に誰が触るのか

こうした情報が、声掛けひとつで共有されます。

つまりベテランの一声は、単なる礼儀ではありません。

仕事を円滑に進めるための連携であり、相手へのリスペクトでもある。

ここが大きいのだと思います。


若い人に足りないのは「礼儀」ではなく「視野」かもしれない

こう書くと、「今の若い人は礼儀がない」と言いたくなるかもしれません。
でも、私はそこまで単純には考えていません。

今回の新人さんも、たぶん悪気はありません。

接客経験があるなら、本来は一言の大切さを知らないはずがない。
それでも無言で置いていくのは、礼儀がないというより、今はまだ

「自分の作業をこなすこと」で頭がいっぱい

なのだと思います。

新人の頃は、それで普通です。

覚えることが多い。
失敗したくない。
早く戦力になりたい。
周りに迷惑をかけたくない。

そうなると、人に声をかける余裕がなくなる。

これは私自身、若い頃を思い返してもよく分かります。

だから今回の件も、私は「マナーの問題」と決めつけるより、
経験値と視野の差として見た方が自然だと思いました。


40年接客をして分かった。「人は正論で変わらない」

私は飲食店を40年やってきて、約96万人のお客さんと接してきました。
その中で、スタッフともたくさん関わってきました。

そこで痛感したことがあります。

人は、正論で変わるわけではありません。

もちろん、正しいことを言うのは大事です。
でも、正しい言い方をしても、相手が受け取れなければ意味がない。

むしろ、正しすぎる注意は、人間関係を固くしてしまうことがあります。

だから私は、こういう時ほど考えます。

  • この人はどんな性格か
  • どんな言い方なら届くか
  • 今、注意すべきタイミングか
  • まだ観察の段階か

今回の新人さんは、以前の研修の時から「人見知り」と言っていました。
仕事はできる。真面目でもある。
だとすれば、頭ごなしに言うより、軽く気づかせた方が届くかもしれない。

そう考えました。


私が選んだのは「冗談で気づかせる」方法だった

結局、私はまだ強く注意していません。

その代わり、今度また同じことがあったら、こんな感じで言ってみようと思っています。

「あれ? また置き逃げ犯が現れたな(笑)」

あるいは、

「宅配便みたいに置いていかないで、一言ちょうだい(笑)」

冗談っぽく、でも意味は伝わる言い方です。

そのあとに、

「どこに置いたか分からなくなる時があるから、一言あると助かるよ」

と添えれば、角も立ちにくい。

これで反応を見ます。

もし「あ、すみません」とすぐ直るなら、単なる経験不足です。
もし何度言っても変わらないなら、その時はまた別の見方が必要になります。

大事なのは、最初から相手を「礼儀がない人」と決めつけないこと。
まずは軽く投げてみて、相手の反応を見る。

この一手間が、人間関係では意外と大きいと私は思っています。


人を見る力とは、欠点を見つける力ではない

最近、私はよく思います。

人を見る力とは、相手の欠点を見つける力ではない。

「この人はここがダメだ」
「礼儀が足りない」
「気が利かない」

そうやって裁くことは、実は誰にでもできます。

でも本当に大事なのは、その先です。

  • なぜこの人はそうなるのか
  • 何に意識が向いているのか
  • どう言えば届くのか
  • 今は言うべきか、まだ見守るべきか

そこまで考えて、はじめて「人を見ている」と言えるのではないか。

私はそう思っています。

ベテランさんたちが一声かけるのは、単に礼儀正しいからではありません。
現場全体を見ているからです。
相手が次に動きやすいように、自然と情報を渡している。
そして、その背景には相手へのリスペクトがある。

逆に、新人さんが無言で置いていくのは、
まだ視野が自分の作業の中にあるからかもしれません。

この差は、能力の差というより、
仕事を「人との連携」として見ているかどうかの差なのだと思います。


まとめ|年齢を重ねるほど「注意しない技術」が大事になる

若い頃の私は、もっと早く注意していたかもしれません。
「それ、一言あった方がいいよ」と、その場でストレートに言っていたと思います。

でも今は少し違います。

年齢を重ねるほど、
注意する技術より、注意しない技術の方が大事だと感じるようになりました。

もちろん、言わなければいけないことはあります。
現場の安全や衛生に関わることなら、迷わず言うべきです。

ただ、人間関係のちょっとした違和感は、すぐに正しさで押し切らない方がいいこともある。

少し観察する。
少し待つ。
冗談でやわらかく伝える。
相手の反応を見る。

そのほうが、結果的にうまくいくことが多い。

今回の出来事も、私にとっては「新人さんが気になる」という話ではなく、
ベテランはなぜ一声かけるのかをあらためて考えるきっかけになりました。

仕事ができる人はたくさんいます。
でも、信頼される人は、ほんの少しだけ違う。

その違いは、案外こういう何気ない一言の中に出るのかもしれません。

もし今、職場で「この人、ちょっと気になるな」と思う相手がいるなら、
すぐに注意する前に、一度だけ立ち止まってみるのも悪くないかもしれません。

相手の欠点ではなく、相手の見えている景色を想像してみる。

そこから、伝え方が変わることがあります。

かずお|人を見る力 × AI

60代。介護施設の給食現場で働く調理師。
都心ホテル、東京・虎ノ門での店の経営など、40年にわたり接客の現場で約96万人のお客様と向き合ってきました。
現在は「人を見る力」と「AI時代の学び」をテーマに、ブログ・note・Xで発信しています。

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また次回の記事でお会いしましょう。

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